理事長:向井 扶美

平成4年に障がいのある子どもや親御さんと出会い、平成5年に奄美療育研究会を設立、保護者や障がいのある子どもに関わる想いのある方々と一緒に早期発見から早期療育、特別支援教育と地域で支える体制を作ってきましたが、10年も経つと子どもたちが養護学校を卒業し、安心して自宅から通える場所が必要になってきました。

そこで、法人名はそれまで培った地域のネットワークの意味で「環」をと考え、當島茂登先生に相談して「三環舎」と提案をいただきました。
 
平成18年9月15日社会福祉法人三環舎を設立。この年、障害者自立支援法が成立、「地域で暮らすを当たり前に」がスローガンで、私たちが奄美療育研究会で目指していた「住み慣れた地域で暮らし、学び、働きたい」という願いが実現できそうな予感がしました。

「就労移行支援と自立訓練」の多機能型施設として申請することになりました。実際、労働市場の厳しい奄美で就労移行支援ができるのかという不安はありましたが、このことが幸いして後に就職者を毎年出せるようになりました。

準備している3年間に障害者自立支援法が成立し、新しい体系になってとまどいもありましたが、そのおかげで利用者さんの障害の特性に合わせて多機能型のメニューを行い、また知的、身体、精神の三障害を受け入れられることになり、地域のニーズに添うものになったと思っています。地域への説明会、利用者の募集・説明会を行い、多くの在宅の方が待っていてくださったと皆さんの期待と責任を感じさせられました。

障害福祉サービス事業所「あしたば園」始動

19年4月1日、開園の日は24人(就労移行支援15人自立生活訓練9人)の利用者さんと12人のスタッフでスタートしました。

平成22年菓子工房増築。菓子職人も入職し、本格的にお菓子ができるようになりました。鹿児島県の特産品コンクールや山形屋のナイスハートバザール、販売会にも参加しました。商品ができてもお客様に買っていただくことの難しさを痛感しました。

一方、生姜栽培は3年目から根茎腐敗病、台風被害となかなかうまくいかず、ついに農業は断念して、ビッグⅡのドラゴンフルーツの除草作業などの施設外就労に切り替えました。おかげで1人就職させていただいて、今も頑張って仕事や余暇を謳歌されています。

26年鹿児島県木のあふれる街づくり事業を活用して、生活介護活動棟を建設。癒しの空間として屋嘉比ひろし絵画展のために行ったカルフォルニアの自閉症施設を参考にスヌーズレンを導入しました。有効に活用するため、カルフォルニア大の教授や東京の取扱業者にも来ていただき職員研修を行いました。

26年度、奄美市高齢者福祉課からの提案で島じゅうりまごころ便の開発事業(起業支援型地域雇用創造事業)を行いました。島料理をレトルトにして、高齢者のお宅に定期的に届け、併せて見守りも行うことを目的に事業が組み立てられましたが、作ってみると意外にコストが高くなり、定期的宅配は継続して申し込む方が少なく、店頭で販売することにしました。

しかし、高齢者のみならず一般の方や島出身の方、本土にいる子どもに送るなど喜んでいただき、特に「けいはん」は人気商品となっています。27年度より和光町に加工場を借りることができ、島じゅうりまごころ便で売り上げが1千万円を超えたので、その1%を「世界自然遺産のために使ってください」と奄美市に寄付をしました。市長さんからお礼を言われた利用者さんの顔はとても誇らしげでニコニコでした。

25年度奄美高校とのコラボで高校生と一緒に奄味ラスクを作ったり、島一番コンテストでは、26年島じゅうりまごころ便、28年度パッションシフォンケーキが入賞しました。29年度は町田酒造との業務提携(除草、清掃作業、すもも酒・たんかん酒ゼリーの商品開発など)を行い、地域と連携して活動を行っています。

あまみ障害者・就業生活支援センター

あしたば園で平成19年に就労移行支援を開始し、翌年度7月に1人就職、続いて12月に2人計3人の利用者さんが就職することができました。実習からトライアル雇用を積み重ね、また就労してからも職場を訪問し、定着のための支援を行い、ほとんどの方が現在も継続して就労されています。

翌年は3人就職されましたが、就労支援員1名で、就労訓練から職場開拓、実習、定着支援まで手が回らず、この地域に就業・生活支援センターが必要との思いで県に相談したところ、実習者20名、就職者10名の実績のある事業所でなければ委託を受けられないとのこと。

離島で全国一律の基準は難しいとのことで、後押しするために準備室の制度が国に創設され、平成22年8月に大島地区障害者就業・生活支援センター準備室が開設されることになりました。

専任の職員が2人配置できたことで、その年はあしたば園から6名が就職でき、翌23年8月あまみ障害者就業・生活支援センターが県内4番目のセンターとして大島郡の障がい者の就労支援に取り組むことになりました。場所はハローワークの隣という立地の良さで、社会福祉協議会の4階をお借りすることになり、職員は現在就業支援員2名、生活支援員1名、事務1名の4名体制、他に県より就業開拓推進員を1名配置していただいています。

各離島も定期的に訪問し、平成29年12月現在で登録数320名、これまでの6年余りで実習者延べ249名、就職者延べ209名(年平均34名)となっており、ハローワークなど関係機関や事業所と連携しながら巡回相談、就労・生活支援、定着支援、就職者の集い、就労ネットワークの構築などを行っています。また県内の他の就業・生活支援センターとの情報交換も行っています。

相談支援事業所「晴ればれ」

25年4月計画相談を作成するため、指定特定相談支援事業所「晴ればれ」を開設。あしたば園のパソコン室を事業所にして相談支援専門員1名を配置しました。

初年度はまだ行政の体制ができず計画相談も少なかったのですが、しっかり基礎作りをすることができました。翌年は相談支援専門員2名を配置し、積極的に計画相談を行うことができるようになりました。

27年度は夢来夢来の建設に伴い、その一角に事務所を移転し、現在3.5人の相談支援専門員が関係機関や事業所と連携をとりながら、地域の障がい児・者の丁寧な相談支援にあたっています。

障害福祉サービス事業「夢来夢来」

店舗の「あしたば村」の建物の老朽化が著しく、焼き立てパンを販売する店としてはふさわしくなく、なんとかメインのパンを焼き立てで提供したいと23、24、25と3年間国・県の施設整備の要望を申請するも叶いませんでした。

たまたま、「かごしま木づかい推進事業(木造公共施設等整備事業)」を使えることになり、鹿児島県産の木材をふんだんに使い、一部に琉球松を配して快適な建物になりました。

設計・施工の段階で照明、内装など職員みんなで知恵を出し合って素敵なお店になり、おかげで人気の繁盛店になりました。名前もミーティングで何度も話し合い、1人の職員からの「夢来夢来」の提案に決定しました。

平成27年4月夢来夢来がオープンしました。パン工房と店舗、喫茶をメインに島じゅうりで培ったランチとお弁当、隣のサービス付き高齢者住宅の清掃、ワックス掛け、むかいクリニック厨房での食器洗いと働く力をつける事業所となっています。

あしたば園開設後ずっと西仲勝から1日2回パンを運んでいましたが、8年かかって念願の焼き立てのパンを出せるお店ができました。オープン以来繁盛店になり、途切れることなくお客様が来てくださるのでとても忙しいのですが、職員・利用者さん共に協力して元気に頑張っています。

帰りは「今日もよく働いた~!」と充実した顔の皆さんの笑顔がとても嬉しく頼もしく思います。利用者、職員共々愛されるお店づくりを目指して張り切っています。

今後とも職員一同力を合わせて、地域の障がいのある方々やご家族の皆様と一緒に心身ともに豊かな生活を送っていけるよう力を尽くしていきたいと思います。